交流サイト(SNS)の利用はリスクが高い―と言わざるを得ない、深刻な被害である。摘発による抑止と合わせて、サービスを提供する事業者に責任ある対応を徹底させることが急務だ。
SNSを通じて恋愛感情を抱かせ、投資名目などで現金をだまし取るSNS型ロマンス詐欺の被害が県内で急増している。今年1月から10月末までの被害は45件、約6億3千万円超で、被害額は昨年1年間の約6倍だ。
被害の入り口となるのは、インスタグラムやフェイスブック、マッチングアプリだ。こうしたSNSなどで接触した後は、個人間の連絡に適した無料通信アプリのLINE(ライン)に誘導され、関係を深めるようなやりとりを行った上で、交際継続には現金が必要とし、投資のための資金提供を要求されるケースが被害の多くを占める。
SNSは、近くにいない人とでも気軽に交流を深めることのできる便利なサービスだ。しかし、悪意を持って近づいてくる人がいることを忘れてはならない。
県内では、海外の俳優や資産家の家族などをかたる人物からの接触が被害のきっかけだったケースがある。そうした人が、本県で暮らしている、何の関わりもない人と突然交流しようとすることはまずあり得ない。
電話で現金を要求されたら、なりすまし詐欺を疑うという人は多いだろう。SNSで現金を求められた場合もまったく同じで、詐欺だと考えた方がいい。
近年は人工知能の発達により、オンラインのやりとりですら、作り出した映像によって行うこともできるようになっている。これを信用してしまうと、疑うのが難しくなるので危険が高まる。
SNSの利用を直接会ったことのある人との間にとどめることで、被害に遭う恐れは低減できる。だまされるかもという不安が大きい人は、SNSの利用自体をやめることも方法の一つだろう。
国はSNSを提供する事業者に、知らない人を交流相手として認める「友だち」に追加する際の警告表示や、本人確認強化の徹底などを求めている。ただ、SNSは多くの人が利用することで収益が上がる仕組みのため、事業者が国の要請に積極的に応じているとは言い難い状況だ。
自らの提供するサービスで、多くの人が金をだまし取られているにもかかわらず、悪意ある人の利用を排除できていないのは厳しい非難に値する。国には規制強化を含め、事業者に実効性のある対策を促していくことが求められる。