【12月3日付社説】単身世帯の増加/孤立させない仕組み整えよ

2024/12/03 08:10

 国立社会保障・人口問題研究所が公表した将来世帯数推計で、本県の全世帯に占める1人暮らしの割合が21年後の2045年に4割を超えることが分かった。人口減少で世帯総数が25年以降、減り続けるなか、未婚者の増加や高齢化で単身世帯の割合が増える。65歳以上の高齢者は約4人に1人が単身世帯になる見通しだ。

 家族の在り方や人生観、価値観が多様化し、親や子ども、孫などとの同居を選択しない人、生涯にわたり独身でいることを選ぶ人が増えている。しかし急病など緊急時の対応、防犯などに不安を抱えている人が少なくない。

 高齢者の場合、社会との関わりが少なくなると、孤立しやすい傾向にある。地域との関わりを持たないまま、定年を迎え退職した男性などは、自宅にこもりがちになるケースがある。こうした人にどう支援の手を差し伸べ、孤立を防ぐかが課題だ。

 1人暮らしでも友人や知人などとのコミュニケーションを増やせば、孤立のリスクを低減できる可能性はある。単身者が何らかの形で社会とつながり、安心して暮らせる仕組みづくりが急務だ。

 住民同士の声かけや見守り活動の重要性は増すだろう。県内の一部自治体では社会福祉協議会などが中心となり、高齢の単身世帯などに定期的に食事を届けるボランティア活動も行われている。

 親しくなくとも地域の人とあいさつを交わしたり、清掃などの自治会活動や地域のイベントに参加したりすることは、単身者が外部とコミュニケーションを取るきっかけになる。県や市町村は、自治会や民間団体などが企画する交流事業を支援し、地域住民と関わる機会を増やすことが重要だ。

 地域に密着し、単身の高齢者などのさまざまな相談に乗り、支援が必要であれば行政などにつなぐ民生委員の役割も大きい。単身者の安否確認などを日ごろの重要な活動としている委員は多く、医療や介護のサービスが必要となった人の命、健康を守ることにも貢献している。

 しかし全国的に高齢化や業務負担の拡大で、民生委員の担い手不足が進んでいる。今後、単身世帯が増えれば、民生委員の負担が大きくなるのは避けられず、人材の確保、育成は喫緊の課題だ。

 民生委員は専門的な知識が求められるものの、無報酬であることが担い手不足の一因と指摘されている。国や自治体は、委員の業務負担の軽減や効率化、処遇の改善などを進め、単身世帯を支える人材を確保すべきだ。

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