国の原子力委員会(上坂充委員長)は25日、2023年度版の原子力白書を取りまとめた。23年8月に始まった東京電力福島第1原発の処理水海洋放出について、安全性は国民に一定程度浸透しているとしつつ、国と東電に「継続して不安の声に応える粘り強い取り組み」を求めた。
白書は、国際原子力機関(IAEA)による処理水放出計画の評価を「第三者機関の協力を得て情報発信の客観性や透明性を確保しようとする取り組みは有効」と指摘。国と東電の対応も、国民の不安の払拭に一定程度寄与したと総括した。
一方、放出は放射性物質の安全性などについて「国内外で議論を巻き起こした」と言及した。中国が日本産水産物の輸入を停止、ロシアも追随し、ホタテなどを取り扱う漁業関係者が影響を受けたと振り返った。
白書は、放射線に関する正確な知識が浸透していないと指摘。生活の中でも常に被ばくしていることや、医療や農業、工業分野で利活用されている現状を強調し、利用促進には安全性の確保に加え、社会的な受容性など多面的な考慮が必要だと訴えた。