第172回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)の候補作が12日付で発表された。芥川賞には福島県郡山市出身の鈴木結生(ゆうい)さん(23)の「ゲーテはすべてを言った」(「小説トリッパー」秋号)など5作が、直木賞には地球惑星科学の研究者から作家に転身した伊与原新さん(52)らの5作がノミネートされた。
選考会は来年1月15日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれる。
鈴木さんは郡山市出身で2013年まで住んでおり、現在は福岡市在住。西南学院大4年時に林芙美子文学賞で佳作を受賞した。今回の「ゲーテはすべてを言った」が2作目となる。同作はゲーテの研究者である主人公が、自分の知らないゲーテの言葉と出会い、その原典を探し求める物語。鈴木さんは「初めて書いた(1作目の)小説は、故郷である福島県や郡山市の記憶を保存するためのものでした。私の書くものはすべて、あの一冊の続きです」とコメントした。
ほかの候補作は次の通り。
【芥川賞】安堂ホセ「DTOPIA(デートピア)」(「文芸」秋号)▽竹中優子「ダンス」(「新潮」11月号)▽永方佑樹「字滑り」(「文学界」10月号)▽乗代雄介「二十四五」(「群像」12月号)
【直木賞】朝倉かすみ「よむよむかたる」(文芸春秋)▽伊与原新「藍を継ぐ海」(新潮社)▽荻堂顕「飽くなき地景」(KADOKAWA)▽木下昌輝「秘色(ひそく)の契り」(徳間書店)▽月村了衛「虚の伽藍(がらん)」(新潮社)