臨時国会が開幕した。石破茂首相が10月に就任し、与党が過半数割れした衆院選後の特別国会は、わずか4日間で閉じられた。与野党伯仲の国会でようやく本格論戦が始まる。国内外に山積している課題の解決策を導き出し、国民の負託に応えてほしい。
物価高対策や成長戦略を盛り込んだ政府の経済対策の財源を裏付ける、2024年度補正予算案の審議が最大の焦点になる。経済対策の策定には自民、公明の両党に加え、衆院選で躍進した野党の国民民主党が関わり、年収103万円の壁の引き上げ、ガソリン減税の検討などが明記された。
少数与党で補正予算案の成立が見通せず、「部分連合」の手法で予算案の骨格がつくられた形だ。しかし、論戦の主舞台となる予算委員会の委員長ポストが立憲民主党に渡っており、与党が強引に審議を進め、成立させることはできない状況だ。
これまでの自公政権では党内の事前審査で了承を得てから法案が国会に提出され、国会での議論は形骸化していた。少数与党では、野党の理解を得られなければ法案成立は見通せない。政府・与党はこれまでのような国会軽視の姿勢を改め、野党の合意を得るため国民に見える形で丁寧に議論する努力を惜しんではならない。
「政治とカネ」の問題を巡っては、政治資金規正法の再改正などが議論される。既に始まっている与野党協議では、政党から党幹部に渡される使途公開不要の政策活動費は廃止の方向性で一致しているものの、企業・団体献金の禁止については自民などが反対するなど意見の隔たりが大きい。
歳費とは別に月額100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開についても結論が先送りされてきた。与野党の協議がまとまらないことを理由に、課題を放置しておくことは許されない。
先の衆院選の結果を見れば、国民がこれまでの審議や各党の対応に納得していないのは明らかだ。与野党ともに強い危機感を抱き、政治改革を前に進めるべきだ。
野党の役割も大きく変わる。予算委員長を含め17ある衆院常任委員長ポストのうち七つは野党に配分された。政府・与党に「反対」を唱えるだけでは、国民の期待に応えたとはいえない。政府・与党の法案などに賛同できないのであれば対案などを示すのが筋だ。
政党と議員がその責務を全うし国会の存在意義を高めなければ、政治の信頼回復は成し得ないことを肝に銘じてもらいたい。