東京電力福島第1原発事故により12年近くにわたって発売が延期されていた福島市産のユズを使った酒が24日、初出荷を迎えた。南会津町の会津酒造が同日、福島市の県観光物産館で試飲販売会を開いた。
同社は日本酒の裾野を広げようと、2008(平成20)年ごろからかんきつ系の酒の構想に着手。ユズを特産とする福島市で農家の安田和昭さん(71)に出会い、試作を重ねてきた。
商品は当初、11年3月11日午後3時に市内で披露する予定だったが、準備の最終段階で大地震に見舞われた。東京電力福島第1原発事故後、政府は同市産のユズの出荷を制限。完成した酒は日の目を見ないまま、10年以上の時が流れた。
同市のユズの出荷制限が解除された今年3月。同社は商品化へ再始動し、ようやく出荷へとこぎ着けた。完熟後に収穫したユズと特別純米酒を使い、香りが濃く、キレのある味わいに仕上げたという。
販売会で購入した同市の河原幸子さん(73)は「あの日を思い出す品。しっかり味わって、前を向きたい」と話した。
同社の渡部裕高専務は「社員の心の中にはずっとあり続けた。喜んでもらえたらうれしい」と安堵(あんど)した様子。安田さんは「皆さんに支えられて12年越しの願いを遂げた。もっと良いユズを作っていく」と語った。
375ミリリットル入り1760円。同館や道の駅ふくしまで販売する。問い合わせ先は同社(電話0241・62・0012)へ。