京都大などの研究グループは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を活用し、血管の形成や心筋細胞の増殖を促す「心臓周皮細胞」の機能を持つ細胞を高効率に作製することに成功したと26日付の米科学誌に発表した。新たな心不全治療の開発につながることが期待される。
胎児期の体内では、心外膜細胞と呼ばれる細胞から、周皮細胞など心臓を組織する各細胞が作られる。iPS細胞から心外膜細胞を安定的に作る手法は既に確立されている。一方で心外膜細胞から周皮細胞ができるには複数のステップが必要で、他の細胞も同時に作り出されることがあった。
グループは、心外膜細胞で「SMAD3」という遺伝子の量が増えることに着目。SMAD3の役割を調べるため、小さなリボ核酸(RNA)を加えて結合させ、わざと働きを落とした。すると、心外膜細胞は通常より細長い形に変化した。
変化した細胞を調べると、血管を作る作用を促す周皮細胞の機能を持つことが分かった。さらに、この細胞が分泌する物質は、心臓の働きの中心となる心筋細胞の増殖を促進する効果を持つことも確認された。