東京電力は、福島第1原発で多核種除去設備(ALPS)から発生する汚泥の処理を始める時期を2028年度からとする計画を原子力規制委員会に示した。直近の想定より2年遅れたスケジュールになっており、着実な管理や処理の体制構築が欠かせない。
汚泥は、汚染水に含まれる放射性物質をALPSを通じて取り除く過程で発生する。放射線量が高く、ポリエチレン製の専用容器(HIC)に入れて管理している。原子力規制委員会などは、水分を含んだ汚泥が容器から漏えいするリスクを指摘し、東電に汚泥を脱水処理し固形物として安定保管することを求めていた。
脱水処理に必要な施設の建設を巡っては、放射線被ばくを低減するための設計変更などで、完成時期を何度か延期してきた経緯がある。当面は26年度での処理開始を目標としてきたが、原発の敷地内で建設候補地を見直したことに伴う設計の見直しや工期に与える影響を踏まえ、計画全体を後ろ倒しにした。
事故を起こした原発で発生する放射性物質を含む汚泥の処理は、経験したことのない取り組みであることは理解できるが、計画にずさんな側面はなかったか。汚泥は原発で汚染水を処理する限り発生し続ける。東電は計画延期を最後と考え、安全面を十分に守りながら処理開始の時期を可能な限り早めることが重要だ。
汚泥を入れたHICは10月10日現在、4398基が保管されており、現行の保管容量の9割強が埋まっている状況だ。東電はHICの発生量を予測し、来年3月に4768基分まで、26年8月に5056基分まで保管容量を増強することで、28年度の汚泥処理開始までに必要な保管場所は手当てできるとしている。
HICの発生量予測は、既存のHIC内の上澄み液を抜き取り、そのスペースに新たな汚泥を入れるなどの抑制対策を積み重ねた数値である。極端な降雨による汚染水の発生増や施設のトラブルで作業が滞った場合には、数値が上振れする可能性が否定できない。東電には予測を過信することなく、余裕を持った保管容量の確保を求めたい。
汚泥を適切に管理し、脱水処理を終えたとしても、固形化したものの処分方法は決まっていないため、さらに保管を続けることになる。政府と東電には、汚泥発生のそもそもの原因となる汚染水の増加を防ぐ対策を講じながら、汚泥の最終的な処分の在り方についても議論していく責任がある。