【12月8日付社説】尹氏の弾劾案不成立/政治空白つくってはならぬ

2024/12/08 08:05

 東アジア情勢が緊迫するなかで、韓国の政治空白が長期化することは国内のみならず、国際社会への影響も極めて大きい。与野党などは責任ある行動で、民主主義が機能していることを示さなければならない。

 韓国の国会できのう、野党6党が「非常戒厳」を憲法違反だとして提出した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の弾劾訴追案は不成立となった。与党「国民の力」の議員が1人を除き議場を退席したことにより、可決に必要な3分の2に出席議員が満たなかった。

 尹氏は弾劾訴追こそ避けられたものの、非常戒厳の宣布により世論、与党に対する求心力は失っている。訴追案の不成立で、事態はむしろ混迷を深める方向に向かっているのは否めない。

 尹氏はきのう午前、国民向けの談話を発表し、非常戒厳の宣布を謝罪した上で、「法的、政治的な責任を回避しない」「私の任期を含めて政局を安定させる方法は与党に一任する」と述べた。直接選挙で選ばれた大統領であれば、与党ではなく国民に判断をゆだねるのが筋だ。対応を与党に一任するというのは理にかなっていない。

 国民や国会を置き去りにして、戒厳宣布を独善的に進めた責任は極めて大きい。自ら辞任することを検討すべきではないか。

 与党の対応も強い非難に値する。韓東勲(ハンドンフン)代表が「主要な政治家を逮捕、収監しようとした」とした上で、「韓国と国民を守るために大統領の早急な職務執行停止が必要」と述べ、一度は訴追案に反対しないことを示唆していた。ほどなく党として反対方針を示すというのは整合性を欠く。

 訴追案に反対するのであれば、全議員が出席した上で否決するのが本来の姿だろう。退席による不成立は、尹氏と同様に民主主義を軽んじる態度だ。大統領に適切な対応を促すことができず、さらに混乱を深めた。

 尹氏が今後の対応を与党に一任するとしているのを踏まえれば、採決前に政情安定に向けた与党としての考えを示すべきだった。韓代表には、国民に対して尹氏の進退などに関する対応について、その時期などを含めて説明することが求められる。

 対応が問われるのは、国会で多数を占める野党側も同じだ。政府高官の弾劾訴追案を繰り返し提出し、予算案に強硬に反対するなど、政権との対話姿勢に欠ける面があるのは否めない。政情が不安定な状況下で、こうした戦術は国内外の理解を得られるものではないことを肝に銘じるべきだ。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line